梅は、古くから日本人の生活に深く根付いてきた植物です。
神社で見かけることも多いですが、そこには深い理由があります。
もちろん、梅は神社だけではなく、庭木としても人気がありますね。
庭がない場合、梅はベランダでも育てられますよ。
この記事では、梅の歴史や様々な魅力、育て方についても解説します。
- 日本人と梅のつながり
- 梅が神社にある理由
- 梅の種類
- 梅を鉢植えで育てるポイント
ぜひ、最後までお読みください。
日本人と梅のつながり
梅は、8世紀頃、中国から伝来したと考えられています。
奈良時代初期の『古事記』や『日本書紀』に、梅は登場していません。
しかし、時代が進むにつれ、梅は日本の文化に深く根付いていきました。
奈良時代後期の『万葉集』には、梅に関する歌が119首も詠まれています。
元号「令和」の出典は、『万葉集』の梅花の歌、三十二首の序文です。
また、現代では、商品やサービスの格付けに「松竹梅」が使われることがあります。
それぞれ、次のような意味がありますよ。
- 松:常緑樹で冬でも、凛々しい姿を保つ事から「長寿・延年」の象徴
- 竹:折れにくく、成長が早い事から「生命力・成長」の象徴
- 梅:まだ寒い早春に、香りの美しい花を咲かせることから「気高さや長寿」の象徴
松竹梅は、本来優劣なく、どれも同じようにおめでたい意味をもちます。
菅原道真と梅の伝説
学問の神様として有名な菅原道真は、梅を愛したと伝えられています。
邸宅の梅を常に眺めて過ごし、幼い頃より、梅を題材にした和歌や漢詩を詠んでいます。
なかでも「飛梅伝説」は、有名な逸話です。
菅原道真は、藤原氏の陰謀により大宰府に左遷されることとなりました。
都を離れる日、幼い頃より親しんできた自邸の梅に次の歌を詠みます。
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春なわすれそ
(春になって)東の風が吹いたならば、その香りを(私のもとまで)送っておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、(咲く)春を忘れてくれるなよ。
マナペディア
主人を慕った梅は、道真が大宰府に着くと、一夜のうちに道真の元へ飛んできたと伝えられています。
この伝説は、現在でも多くの天満宮で語り継がれ、梅の花が菅原道真の精神と結びついていると信じられています。
梅と神社の関係性
梅は、神社で多く見られますが、理由はあるのでしょうか。
菅原道真との深い関係
先述した菅原道真との関係性から、多くの天満宮や天神に梅が植えられています。
天満宮は、菅原道真を祀る神社の総称です。
菅原道真は平安時代の学者・政治家で、後に「学問の神様」として崇められるようになりました。
天満宮は、学業成就や試験合格を祈願する場所として、多くの参拝者が訪れます。
天神も天満宮と同様に菅原道真を祀る神社を指します。
特に「天神様」として親しまれ、天神祭や学問成就の信仰が根付いています。
天神と天満宮は基本的には同じ意味で使われますが、地域や歴史的な背景によって使い分けられることがあります。
どちらも菅原道真に由来し、学問や厄除けの神様として広く信仰されています。
全国に、菅原道真を祀る天満宮や天神は、約12,000社あるとされていますが、代表的な天満宮や天神をご紹介します。
太宰府天満宮(福岡県) | 全国の天満宮の総本社で、飛梅伝説の地として有名。 |
北野天満宮(京都府) | 菅原道真が深く関わる地にあり、梅花祭が有名。 |
湯島天神(東京都) | 東京の代表的な天神社。学問の神様として多くの受験生が訪れる。 |
大阪天満宮(大阪府) | 大阪の天神社で、毎年行われる天神祭が全国的に有名。 |
亀戸天神社(東京都) | 学問成就を祈願する参拝者が多く、太鼓橋と池の周囲の藤棚が名物。 |
防府天満宮(山口県) | 日本最初の天満宮として知られる。学問の神様を祀る神社。 |
邪気を払う力
天満宮や天神以外の神社でも、梅はよくみられます。
梅の芳香には、邪気を払い清める力があると信じられてきました。
そのため、神社の境内に梅を植えることで、神聖な場所を清め、邪気を寄せ付けないという目的があります。
不屈の精神と繁栄の願い
梅は、厳しい冬の寒さを耐え忍び、春にいち早く花を咲かせることから、生命力や不屈の精神の象徴とされています。
このことから、困難を乗り越え、目標を達成するための力をもたらすと考えられてきました。
受験シーズンに咲く梅、受験生もガンバレ~
また、梅の木は古くまで生きることが多く、人々の長寿を願う気持ちと結びついています。
さらに、梅の実が豊かに実る様子から、子孫繁栄の願いも込められているのです。
梅の種類を知る
梅は、美しい花と酸味のある実で親しまれる植物です。
品種改良が進み、現在では300種類以上もの品種が存在するとされています。
その中でも、大きく「花梅」と「実梅」に分けられますよ。
花梅と実梅の違い
花梅は、美しい花や香りを楽しみます。
紅梅やしだれ梅など、多くの美しい品種があり、盆栽としても楽しまれています。
しかし、花梅は、多くの場合実をつけず、実をつけたとしても、食用には向きません。
一方、実梅は果実を収穫するために、栽培されています。
梅干しや梅酒など、梅の実は私たちの日常に根付いた食品ですね。
花梅のように、種類は豊富ではありませんが、白や薄いピンク色の花を咲かせます。
実梅は、花も実も楽しめますね。
花梅と実梅の代表的な品種を比較してみました。
花梅の種類
系統 | 性質 | 特徴 | 主な品種 |
野梅系 | 野梅性 | 白色・淡紅色の花、早咲き | 冬至、一重野梅、八重野梅、見驚 |
難波性 | 小ぶりな樹形、小枝が多い、良い香り、遅咲き | 御所紅、蓬莱 | |
紅筆性 | つぼみの先端が赤い | 紅筆、内裏 | |
青軸性 | 緑色の枝、青白い花の品種もある | 月影、白玉、緑萼 | |
緋梅系 | 緋梅性 | 濃紅色の花、小さい樹形 | 緋梅、鹿児島紅、蘇芳梅 |
紅梅性 | 明るい赤色が多い、白色の花もある | 大盃、紅千鳥、東雲 | |
唐梅性 | 下向きに咲く花、桃色の花 | 唐梅 | |
豊後系 | 豊後性 | 太い枝、大きい葉と花、淡紅色の花、遅咲き | 桃園、楊貴妃、桜鏡 |
杏性 | 細い枝、小さい葉、淡紅色や白色の花 | 一の谷、緋の袴 |
実梅の種類
種類 | 特徴 | おすすめ加工方法 |
南高梅 | 薄い皮、柔らかい果肉、ジューシー、種が小さい、知名度高い | 梅干し、梅シロップ、お菓子 |
白加賀梅 | 肉厚な果肉、さっぱりした味 | 梅シロップ、梅酒、梅干し |
豊後梅 | 酸味が少なく、果肉が多いピンク色の花が咲く | 梅酒、ジャム、梅シロップ |
鶯宿 | 実が硬く香りが強い、受粉樹としても◎ | 梅酒、梅ジュース、カリカリ梅 |
古城梅 | 引き締まった実、フレッシュな香り | 梅酒、梅シロップ、カリカリ梅 |
実梅の場合、受粉のために2品種以上を植える必要がありますよ。
梅をベランダで育てるポイント
梅は丈夫で、初心者にも育てやすい植物です。
次のポイントを参考に、梅の鉢植えにチャレンジしてみましょう。
植え替え
ポットで購入した梅は、鉢に植え替える必要がありますが、花芽がついている場合、植え替えはさけましょう。
ポットのまま花を咲かせて、花が終わってから、植え替えることをおすすめします。
どうしても植え替える必要がある場合は、土を崩さずに、ポットから抜いたままの状態で植え替えてくださいね。
用土と肥料
梅は、水はけのよい土を好みます。
土は、赤玉土7~8:腐葉土3~2の比率を目安に配合してください。
鉢も、素焼き鉢など、通気性のよいものを選ぶとよいでしょう。
花や実をたくさんつけるには、肥料も必要です。
花後、実の収穫後、11月に、緩効性化成肥料を与えてください。
水やりと置き場所
梅は、根が丈夫でたくさん水を吸います。
表面の土が乾いたらたっぷり与えてください。
特に花が咲く瞬間は、水をたくさん必要としますので、水切れには注意しましょう。
置き場は、日当たりと風通しのよい場所です。
実梅の場合、多くの品種は開花時期に4℃以下になると、実つきが悪くなります。
寒冷地で育てる場合は、「白加賀」「豊後」など、寒さに強い品種を選ぶとよいでしょう。
受粉
梅は、一種類で実をつける品種は限られます。
実梅の場合、他品種も一緒に植えて、受粉させる必要があります。
品種によって相性がありますが、一般的に受粉樹として用いられるのは、花香実、甲州小梅、竜峡小梅、鶯宿などです。
実つきが悪い場合、品種の相性を調べたり、人工授粉を検討してみましょう。
剪定
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」といわれるように、梅は剪定が必要です。
梅は、切ることによって、新しい芽をだし、そこから花をつけます。
剪定しないと、花付きが悪くなってしまいますよ。
剪定は、6月までに終わらせてください。
梅は、7月から8月に花芽を形成するため、7月以降に剪定すると、花芽を切ってしまう可能性があります。
葉から2節目くらいを残して切ってくださいね。
梅を知ってベランダで楽しもう:まとめ
ここまで、梅を知る、育てるという点から解説してきました。
まとめます。
- 8世紀頃に中国から伝わる
- 『万葉集』には梅に関する歌が119首もある
- 「松竹梅」は本来どれも同じようにおめでたい意味がある
- 学問の神様菅原道真は梅を愛した
- 「飛梅伝説」は多くの天満宮で語り継がれる
- 菅原道真との深い関係
- 邪気を払う力が信じられていた
- 不屈の精神や繁栄の願いとして
- 梅は300種類以上存在する
- 花梅は観賞用
- 実梅は実の収穫
- 植え替えは花後に
- 水はけのよい土と肥料が必要
- 水はたっぷり、日当たりよい場所で
- 2種類以上を植えないと実がつかない
- 剪定は6月までに終わらせる
寒空の下、他に先駆けて美しい花を咲かせる梅。
その凛とした姿はもちろん、上品な香りも多くの人々を魅了します。
さらに、梅の実は加工することで様々な食品に姿を変え、私たちの日常生活に取り入れられています。
古くから、日本の生活文化においても欠かせない存在であり、季節感を演出する花としてだけでなく、縁起物としても重用されてきました。
日本人にとって、梅は身近な存在です。
厳しい冬を乗り越えて花を咲かせる梅から、何かしらのメッセージを受け取っていただけるとうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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