神社には大きな木がありますが、その中のひとつにクスノキがあります。
私の住まいは神社の裏にあり、大きなクスノキが見守ってくれています。
このクスノキに、どんなに励まされているでしょう。
朝と夜寝る前に挨拶をし、寂しいときには、話をきいてもらいます。
風が吹くと、上の枝がサワサワと揺れて、話しかけてくれているように感じるのです。
木のそばで生活をすることは、慌ただしい日常に潤いと癒しを与えてくれます。
クスノキって、名前はきくけどどんな木でどんな葉をしているの?
どうして神社にはクスノキがあるの?
トトロが住んでいるのはクスノキ?
このように思われる方も多いでしょう。
毎日クスノキに感謝しながら生活している私が、クスノキにまつわる謎と魅力を解説します。
- クスノキの特徴
- クスノキが神社に多い理由
- クスノキの神秘性と魅力
クスノキの特徴

まずは、クスノキの特徴について解説します。
名前 | クスノキ、クスノキ、樟 |
学名 | Cinnamomum camphora |
分類 | クスノキ科ニッケイ属 |
分布 形態 | ベトナム、台湾、中国、日本(関東地方南部以西から本州の太平洋側、四国、九州・沖縄)常緑高木 |
開花時期 | 花 5月〜6月 実 10月〜11月 |
クスノキは、非常に大きく成長し、30メートル以上になることもあります。
枝が広く伸びる美しい樹形です。
葉の表面は光沢があり、濃い緑色。
常緑樹ですが、4月下旬に赤く色づいた古い葉が落葉し新芽がでます。
5月~6月になると、小さなクリーム色の花が咲きますよ。
実は、直径約7~8mmの球形で、10月~11月頃に黒紫色に熟します。
葉や枝には特有の芳香があり、これは防虫効果を持つ樟脳の成分です。
クスノキと神社の関係

神社でみかけることが多いクスノキですが、どうしてなのでしょうか。
それには多くの理由があります。
実用的な理由
まずは、クスノキが神社に植えられる実用的な理由からみていきましょう。
防風・防災、防虫
クスノキは非常に大きく成長するため、強風を防ぐことができます。
また、土壌の浸食を防ぎ、境内を守る効果も期待できます。
樟脳のスーッとする特有のニオイは、虫を寄せつけません。

クスノキは、天然の防虫剤としてもしられていますよ。
景観の美しさ
クスノキの大きく美しい樹形は、神社の景観を引き立てます。
存在感があり、神聖な雰囲気を演出してくれるのです。
壮大な樹形、葉や枝振りの美しさから、景観の面でもとても魅力的な木です。
歴史的・文化的な理由
次に、歴史的、文化的な背景からクスノキの神社との関係性をみていきましょう。
古来からの信仰
クスノキは、たいへん長寿であることから、生命の象徴と考えられてきました。
樹齢の古い木には、「目には見えない尊いなにものか」が宿ると考え、お供えをし、土地の人々を守っていただけるよう手厚くまつったのです。
そして、いつしかご神木として信仰の対象と崇められてきました。



長い年月、ずっとその場所で見守り続けてくれているのですね。
パワースポット
クスノキがある神社は、パワースポットとして取り上げられることも多いです。
クスノキの強いエネルギーが、多くの人をひきつけるのです。
また、クスノキのもつスピリチュアルな力は、心と体に深い癒しとエネルギーを与えてくれます。
御神木としての役割
多くの神社では、クスノキが御神木としてまつられています。
御神木は神の宿る木とされ、参拝者にとって重要な存在です。
クスノキから抽出される樟脳の香りは、清浄なものとされ、神事や祭礼で用いられることもあるのです。
自然信仰については、次の記事も参考にしてください。


クスノキが登場する伝説や物語


クスノキは、古代から現代にかけての日本の文化や信仰、伝説など、さまざまな場面で登場します。
クスノキは、日本人の精神文化に深く根ざしているといえるでしょう。
クスノキにまつわる伝説
クスノキにまつわる伝説は多くあり、地域の文化や歴史の一部として語り継がれています。
楠木正成の伝説
楠木正成は、鎌倉時代の末から南北朝時代にかけて活躍した武将で、現在も「楠公さん」として親しまれています。
「太平記」に記された「桜井の別れ」の伝承地「史跡桜井駅跡史跡公園」には、楠公にちなんだクスノキの木が生い茂っています。
また、京都府の石清水八幡宮には、楠木正成が戦勝軍利を祈り植えたとされるクスノキがあります。
妙勝寺の大クスノキ
足利尊氏の伝説で有名な「妙勝寺」。
足利尊氏が、楠木正成や新田義貞に敗れて九州へ落ちのびる途中、「妙に勝つ」という寺の名を聞き、太刀1振を奉納しました。
その後、態勢を立て直し、湊川の戦いで楠木正成を破って室町幕府を開いたといわれています。
妙勝寺のクスノキは、元々隣在していた2本のクスノキが、成長するにつれて、幹が下部で融着したものと考えられています。
尊氏の家来が、クスノキを楠木正成に見立てて切りつけたため、このような樹形になったとの伝説もあります。
熱田神宮の大楠
愛知県名古屋市の熱田神宮は、三種の神器の一つ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)が祀られていることでしられています。
また、弘法大師のお手植えの伝えられる大楠もパワースポットとして有名です。
樹齢千年以上ともいわれるこの巨大な楠のには、蛇が住んでいて、その蛇を見ることができたら、金運アップのご利益があるといわれています。
蒲生のクス
鹿児島県の蒲生八幡神社境内にそびえたつ大楠は、樹齢約1,600年、根周り33.5m、目通り幹囲24.22m、高さ約30m。
1988年に、日本最大の巨木と認定されています。
伝説では、和気清麻呂が宇佐八幡の信託を奉上し、大隅に流された時に蒲生を訪れ、手にした杖を大地に刺したところ、それが根付いて大きく成長した木ともいわれています。
「那智の大楠」の胎内くぐり
熊野三山の一つ、熊野那智大社の大楠は、平重盛の手植えと伝えられています。
クスノキの根元には、人が通り抜けられるほどの空洞があり、願い事と氏名を書いた「護摩木」を持ってくぐると、願いが叶うといわれています。



様々な伝説が残されているのも、クスノキが人々に親しまれてきた証ですね。
クスノキが登場する物語
クスノキが物語の中で特別な意味を持ち、キャラクターや物語のテーマを深めています。
『となりのトトロ』宮崎駿
『となりのトトロ』に登場するトトロたちは、大きな樹の中に住んでいます。
作中で、この大樹がクスノキであるとは明言されていませんが、特徴からクスノキといわれています。
クスノキは生命力の象徴とされ、安心感や癒しを与えてくれます。
また、大きさや存在感から、自然と人間の共生を象徴しています。
『クスノキの番人』東野圭吾
生きる希望を失いかけていた主人公が、奇妙なきっかけで、ある神社の「クスノキの番人」の役割を任されることに。
クスノキに祈りを捧げにくる人々を通して、自分の人生の意味を見つけていく物語です。
この作品で、クスノキは癒しと再生の象徴として描かれています。
『クスノキの女神』東野圭吾
不思議な力を持つクスノキと、その番人の元を訪れる人々が織りなす物語です。
『クスノキの女神』では、クスノキは背景ではなく、物語の中心に位置する存在として描かれています。
クスノキは、時間を超えた普遍性や生命の循環を象徴しています。



現代でも、クスノキは秘めたパワーを感じさせる存在です。
古くから親しまれているクスノキをしろう:まとめ
ここまで、クスノキの魅力と謎について解説してきました。
まとめます。
- 非常に大きく成長する常緑樹
- 枝が広く伸びる美しい樹形
- 葉や枝に樟脳の成分が含まれる
- 防風・防災・防虫に効果がある
- 美しい樹形が神社の景観を引き立てる
- 長寿であることから生命の象徴と考えられてきた
- クスノキの強いエネルギーがパワースポットとなる
- 樟脳の香りは神事や祭礼で用いられる
- 楠木正成の伝説
- 妙勝寺の大クスノキ
- 熱田神宮の大楠
- 蒲生のクス
- 「那智の大楠」の胎内くぐり
- となりのトトロ
- クスノキの番人
- クスノキの女神
クスノキはその巨大さ、美しい樹形、香り、長寿から、神社や地域社会で親しまれてきました。
防風・防災、防虫などの実用的な理由以外に、歴史的・文化的な背景からも大きな意味を持っています。
大きく、ゆったりと枝を広げるクスノキがそばにあることで、生活が守られているように感じます。
クスノキにまつわる魅力や謎を知ることで、より親密な気持ちで接していけるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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